

桜まつり実行委員長であり、桜堤を守る「NPO法人幸手権現堂桜堤保存会」の副理事長を務める並木克己さんに、日ごろの活動についてお話を伺いました。
「物心ついたら目の前に桜堤があってね、子供の頃はここが遊び場だったよ。」と語る並木さん。
昔は毎日のように川で魚やしじみをとって遊んだそうです。桜堤に立つと、遠くに汽車(現在の東武日光線)の煙が見え、夏の訪れの前には蛍が姿を現します・・・。昔の桜堤を知る人たちには、四季折々の風景が今でも目に焼きついている事でしょう。
権現堂桜堤保存会の発足は、“この風景を残したい”そんな気持ちからはじまりました。並木さんがその想いを強くしたのは、子供が生まれてからです。
「子供の代までこの風景を残さなくては。」
こうして、保存会の活動がはじまりました。
現在、60名の会員で運営されている幸手権現堂桜堤保存会は、平成17年にNPO(特定非営利法人)に認定されました。それまでの長年に渡る活動が認められ、認可がおりるまでに2ヶ月という異例の早さだったそうです。
会員の多くが地元の人たちですが、以前幸手市に住んでいた人や、お花見で桜堤を訪れたのがきっかけで参加している人もいます。完全なボランティアにもかかわらず、毎日誰かが桜堤を訪れて見回りをしています。
保存会の活動は、桜、紫陽花、曼珠沙華(彼岸花)など花の手入れはもちろんの事、枯れ枝・折れ枝・ゴミの回収などの清掃作業、危険箇所の点検と補修、水路の整備、シーズンには桜堤までの案内板を道路に設置・・・数え切れない程の作業を年間を通して行います。
今までの活動の中で一番大変だった事は丸太を使った階段作りと言う並木さん。一箇所の階段を完成させるのに2ヶ月を要するそうです。桜堤を安全に散策していただく為には労力も惜しみません。
お花見のシーズンには、お酒でほろ酔い気分の人が土手から落ちないように危険箇所にロープを張り、桜堤を歩く人が枝で怪我をしないように枝の点検を行います。こうした活動があるから、足元を気にせず、桜の木を眺めながら散歩する事ができるのですね。
保存会の並木さんへ聞いてみました。
「他の桜の名所にお花見に行ったりしますか?」
「保存会の活動が本格的になってからは行ってないね〜。でも、桜が大好きだから昔は色々行ったよ。河津桜、静内町の桜並木、名所じゃないけど釣りで行った湖のほとりに咲いている桜・・・綺麗だったなぁ。」
本当に桜が好きなんですね。
「そんな桜好きの並木さんおすすめの権現堂の桜の見所は?」
「やっぱり菜の花の黄色とのコントラスト。でも、ここのいい所は桜が一列じゃない所だよね。場所によって土手の斜面に2列3列と植えてあるから立体的にボリュームがあるんだよね。桜堤のはじからはじまでの1キロを全部歩いてほしいよね。」
確かに、桜堤から離れて眺めて見てみると、モコモコモコと桜が沸いているように見えます。土手に上がると桜のトンネル、眼下には一面の菜の花。他の名所に負けない位の風景です。写真ではお伝えしきれないこの風景を是非、生で見てもらいたいですね。
権現堂と言えば「桜」。
しかし、最近では、紫陽花や曼珠沙華(彼岸花)のお花見を楽しむ人たちが増えてきています。桜の季節が終わると閑散としていた桜堤に、四季折々の花を植え、活気を呼んだのは保存会の皆さんです。
はじめは3本の紫陽花からはじまり、現在では80種類の紫陽花見る事ができます。5月末〜7月にかけて開催される「あじさいまつり」最終日には、紫陽花を切って無料で差し上げるサービスを行っている為、人気の品種には列が出来るほどです。
また、9月には曼珠沙華(彼岸花)の赤い花が斜面を染めます。
桜の季節の権現堂しか知らないと言う方は、是非、他の季節も楽しんでみてください。

桜の木に寿命があるって考えた事ありますか?桜堤にあるソメイヨシノは、約50年が寿命だそうです。桜堤には大正5年に桜が植えられましたが、戦争の時に伐採され、昭和になってから植えなおされました。権現堂桜堤の桜も多くが寿命を迎えています。
満開に咲き誇る花を見るとその気配を感じさせませんが、木肌を見ると割れているものも見られます。こうした木は弱くなっていて強風などで倒れてしまう心配があります。保存会の活動として、寿命を迎えた木の伐採を考えなくてはいけないそうです。
子供の頃からこの桜を見て育った並木さんにはきっと辛い決断でしょうね。
桜堤を歩きながら、「この木は50年。こっちの木は60年、ここから出てる枝だけでも30年たつんだよ。」と説明した後に「可愛そうでね。切りたくないよね。」と言った時の表情が寂しそうでした。
保存会の活動で「権現堂桜堤の歴史と環境保護」について小中学校で講演をし桜堤への想いを次の世代に伝えています。寿命を迎えた桜の伐採も、次の世代へこの風景を残す為に、避けられない桜の世代交代なのかもしれません。
保存会の人たちは、行政から委託を受けている“茶店”を拠点に活動しています。お花見で権現堂桜堤を訪れたときには是非声をかけてみてください。
「今年も綺麗に咲かせてくれてありがとう。」の言葉をもらった時が一番嬉しかったと語る並木さんが、権現堂の歴史について熱くお話してくれるでしょう。
最後に一つ、保存会からのお願いです。
桜堤で花火をされる方がいるようなのですが、花火の音に驚いて野鳥の数が減っています。とても残念な事です。この風景を残していく為にも、自然の動物達への配慮をお願い致します。